どんな風が運んで来たのでしょう
新しい生命の知らせで
満開の牡丹の花が喝采(かっさい)のように
その花びらを庭に敷き詰めました
雨が夕べの塵(ちり)を静め
若葉をくぐってきた風が
仄(ほの)かな光を雲間にこぼし始めたその日
神の御前に挨拶状を携え
参拝におもむ赴く私の胸には
愛しい命が眠っています
光と雨と風たちが
この白い頁を開いたのでした
高い階段の上にこまいぬ狛犬が見えます
社の辺りの空気は澄み
いとおしさが風景全体に溶け込みます
私は初めての孫をこの胸に抱いています
何百年も茂り続けた樹木
何百年もましましてきた社
その中で何世代もの人々が営んだ物語に
あなたの物語が繋(つな)がるように
その思いを抱いて階段を上がれば
義母に託されたものが何であったか
言葉を越えて響いてきます
今日私はあなたの曾祖母の着物を着
繋げられたよろこびを感じています
命をアケビの蔓(つる)のように感じながら
この風を味わうことの出来る今日まで
幾つの川を渡って来たでしょう
過ぎ去る時間を見送る中で
今日ばかりは時間を出迎えているのです
社は森閑(しんかん)として
その中を風が通りすぎていきました
四つの柏手(かしわで)がこだまし
あなたはその響きの中で
今にも微笑み返しそうな目で眠っています